
感想はネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
原題:She Said
作品データ
- ジャンル:ドキュメンタリードラマ
- 主な舞台:NY
- リリース:2022
- 時間:2h 9m
- キャスト:ゾーイ・カザン(ジョディ・カンター)キャリー・マリガン(メーガン・トゥーイ)
- ディレクター:Maria Schrader
- IMDb:7.3
- rotten tomatoes:88%
あらすじ
#MeToo運動が世界に広がるきっかけとなり、後にピューリッツァー賞を受賞したNYタイムズの記事を執筆したふたりの記者を追う物語
NYタイムズの記者ジョディとミーガンは、ハリウッドの重鎮プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインの常習化した性暴力について取材を進める。しかし、ささやかな示談金で秘密保持契約を結んだ被害者女性たちは沈黙を強いられており、ふたりは性加害者を守るための法制度に愕然とする。さらに、富と名声に守られたワインスタインには社交的なネットワークがあり、調査は困難を極める。倫理と正義の間で葛藤しながらもジョディとミーガンは真摯に粘り強く、正当な方法で取材を続けてゆく。
おちゃのま感想
この記事を書くにあたって、2度目の視聴をしました。前回は昨年(2024年)の8月。その時の感じ方と今回のものは違うだろうと予想しながらも、途中、主人公の記者ジョディとミーガンの地道で誠実な姿勢に目頭が熱くなり、前回より深く報道の意義について考えさせられました。
感じ方が違うだろうと思ったのは、その後の大統領選が理由です。多くのアメリカ国民が選んだ人物は、この映画で取り上げられるワインスタインと重なります。告発された性暴力が認定された人物を大統領に選んだことを思うと、白けた気持ちになるのではないかと考えたのです。
しかし、わたしの杞憂は主人公のふたりの記者が吹き飛ばしてくれました。「目の前に壁がそびえ立っているようだ」と嘆き、「報道しても世間は無関心で、女性に絶望を与えるかもしれない」という不安を吐露しながらも、諦めることなく、足をつかって地道な取材を続けてゆくふたりの記者。取材を続けるふたりを支える上司たち。そして、被害者女性たちの勇気。さらにはワインスタインの非道を見てきた者たちのせめてもの正義。それぞれの思いが寄り集まって大きな意義ある記事になっていく様は、何度見ても胸が熱くなります。
さらに、2度目の視聴で強く印象に残ったことは、『地道な取材で確実な証拠を得る』という報道の本来あるべき姿です。近年、手軽な方法で情報を発信できるようになったことで真実と虚構が混在し、真偽の判断が難しいことさえあります。事実より話題になることが優先されているように感じることもしばしばです。映画の中で示される「確実な証拠なくして報道してはならない」というメッセージはとても重要なもの。これは、わたし自身、心に刻みたいと思います。
最後に、この作品は、性的暴力の問題だけでなく、報道の自由や責任、そして社会正義について考えるきっかけを与えてくれた映画でした。さらに、俳優陣の演技、脚本、演出、それらのすべてが素晴らしかったことを記しておきたいと思います。なお、本作は編集長役を演じたアンドレ・ブラウアーさんの遺作になります。
“タイムズ紙は2017年10月5日にこの記事を掲載した。記事の掲載後、82人の女性がワインスタインに対する告発を自ら行い、職場や法律の改革につながった。ワインスタインは現在、ニューヨークで強姦と性的暴行の罪で23年の刑に服している。2024年4月、ニューヨークの最高控訴裁判所はワインスタインに対する有罪判決をすべて覆した。”

この映画はAmazonプライムとNetflixで鑑賞しました。
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